- SEO運用を5つの機能に分けて体制を考える方法
- 1人から5人までの人数別に現実的な運用範囲
- 責任者、実行者、承認者の分け方と週の時間配分
- 外部に任せる作業と社内に残す判断の線引き
少人数のインハウスSEOで先に決める役割

インハウスSEOの体制づくりで最初につまずくのは、何人必要かという問いから入ってしまうことです。人数を先に決めると、いない人の分だけ仕事が宙に浮きます。先に決めるのは、SEOを回すために必要な仕事の種類です。この章では、仕事を機能に分け、人数ではなく機能で体制を考える方法を整理します。
SEO運用に必要な5つの機能
SEOの運用は、細かく見れば数十の作業に分かれますが、体制を考えるうえでは次の5つの機能にまとめると扱いやすくなります。
- 戦略と優先順位づけ: どのキーワードを狙い、どのページから手を付けるかを決める
- コンテンツ制作: 記事の企画、構成、執筆、編集、リライトを担う
- 技術と実装: 表示速度、クロール、構造化データ、内部リンクの実装などサイト側の改修を担う
- 計測と分析: Search ConsoleやGoogleアナリティクスの数値を見て、次の打ち手を決める材料にする
- 社内調整と承認: 法務確認、営業部門へのヒアリング、予算の確保など、社内を動かす
この5つのうち、1つでも欠けると運用は止まります。たとえば、記事は書けるのに技術改修を頼める相手がいない、数値は見られるのに記事を直す時間がない、といった状態です。体制の議論では、5つの機能のそれぞれに、誰が責任を持つのかを空欄なく埋めることが出発点になります。
人数ではなく機能で数える
1人が複数の機能を兼ねることは、少人数体制では普通のことです。問題は、兼務そのものではなく、兼務している機能が誰にも見えていないことにあります。担当者本人が戦略も執筆も分析も抱えていて、上司はSEO担当が1人いるから大丈夫だと考えている。この状態では、担当者の手が回らなくなった時点で、5つの機能が同時に止まります。
体制図を作るときは、機能を縦に並べ、横に担当者名を書く簡単な表で十分です。空欄があれば、その機能は誰も見ていません。1人の名前が4つ以上の行に並んでいれば、その人に負荷が集中しています。表にするだけで、足りない人数ではなく、足りない機能が見えるようになります。
1人で回すときの兼務の限界
SEO担当が1人の場合、5つの機能のうち同時に回せる数には限りがあります。戦略とコンテンツ制作を1人で持つと、技術と計測が後回しになりやすい、という構造上の問題があります。記事を書くのは成果物が目に見えるので、時間が優先的にそこへ流れます。一方、計測や技術改修は成果物が見えにくく、後回しにされがちです。
兼務の限界を避けるには、最初から回さない機能を決めておく方法があります。たとえば、技術改修は月に1回だけまとめて依頼する、分析は月次レポートだけにする、といった具合に頻度を落として設計します。全部を毎週やろうとして全部が中途半端になるより、頻度を決めて確実に回すほうが、結果として運用は続きます。
人数別の体制パターンと最低限の人数

最低何人いれば回るのか、という疑問には、サイトの規模と更新の頻度で答えが変わるとしか言えません。ただし、人数ごとに何が現実的で、何が難しいかは整理できます。この章では1人、2〜3人、4〜5人の3つの規模に分けて見ていきます。
実態として多い1〜5人の少数体制
まず実態を確認します。株式会社LeoSophiaが200名を対象に行った調査を紹介した記事では、SEO施策に携わる人数が1〜5人という回答が50.5%を占めたと報告されています。運用体制では、内製と外注を組み合わせるハイブリッド型が40%で最多、完全外注が23.5%だったとされています。出典は次のページです。
https://xexeq.jp/blogs/media/topics45808
この数字は調査対象者200名という限られた母数のものなので、日本全体の傾向と断定はできません。それでも、SEOを少人数で運用している組織が珍しくないことと、完全に内製か完全に外注かの二択ではなく、混在させている組織が多いことは読み取れます。体制を考える私たちにとっての意味は、少人数であることは特別な弱点ではなく、前提として設計すべき条件だという点です。
1人体制と2〜3人体制の違い
1人体制では、前の章で述べた5つの機能をすべて1人が持つことになります。現実的に回せるのは、更新頻度を月に数本に絞り、技術改修は最小限にとどめる運用です。大きな改修や、毎週更新するようなペースを求めると、すぐに限界が来ます。1人体制で重要なのは、担当者が不在になったときに運用が止まらないよう、作業手順と判断基準を文書に残しておくことです。
2〜3人体制になると、機能を分担できます。たとえば1人が戦略と分析、1人がコンテンツ制作、もう1人が社内調整と実装の窓口、という分け方です。この規模から、レビューの目が入るようになります。書いた人と直す人が別になるため、記事の品質が安定しやすくなります。一方で、メンバーが他の業務と兼任している場合、SEOに使える時間は想定よりずっと少なくなります。人数ではなく、SEOに充てられる時間の合計で考えることが大切です。
4〜5人体制で専任を置く判断
4〜5人になると、技術担当を専任で置く選択肢が出てきます。ただし、全員をSEO専任にする必要はありません。むしろ、編集者、ライター、エンジニア、営業部門の窓口といった、別の部署の人がSEOの時間を一部提供する形のほうが、社内の知識が記事に反映されやすくなります。
専任を置くかどうかの判断基準は、サイトの更新や改修が週に何回発生するか、という運用量です。月に数回しか作業がないなら、専任を置いても手が空きます。逆に週に何本も記事を出し、毎月のように構造の改修がある規模なら、専任がいないと待ち時間が増えます。人数を増やす前に、現状の作業量を数えるところから始めてください。
役割分担の決め方と週の時間配分

機能と人数が見えたら、次は具体的に誰が何をするかを決めます。役割分担の目的は、仕事を均等に配ることではなく、決める人と動く人と確認する人を混同しないことです。
責任者と実行者と承認者を分ける
少人数の組織で起きやすいのは、決める人と実行する人が同じで、承認する人が決まっていない状態です。この状態では、公開した記事に問題が見つかったときの修正判断が遅れます。すべての施策について、次の3つの役割を名前で埋めておくと、運用が安定します。
- 責任者: 施策の優先順位と結果に責任を持つ。多くの場合はSEO担当のリーダー
- 実行者: 実際に記事を書き、サイトを直す。複数人でもよい
- 承認者: 公開前に内容を確認する。法務や広報、事業部門の責任者など
3つの役割が1人に重なるのは、極端に小さな組織なら仕方がありません。それでも、公開前に別の人が目を通す仕組みは、1つだけでも作っておくと事故が減ります。
週の時間配分の考え方
SEO担当に使える時間が週に何時間あるのかを、最初に見積もります。以下はあくまで設計の一例で、統計的な目安ではありません。週に10時間をSEOに使える場合の配分を考えるなら、記事の制作と改善に半分、計測と分析に2割、技術と実装の確認に2割、社内調整に1割といった配分が出発点になります。
大事なのは、計測と分析の時間を最初から確保しておくことです。制作に時間を取られると、分析は真っ先に削られます。ところが、分析がなければ、どの記事を直すべきかが分からないままに新しい記事を作り続けることになります。更新が続いているのに成果が出ない運用の多くは、この状態です。
他部署との連携窓口
SEOは、1つの部署では完結しません。商品の情報は事業部門、サイトの実装は開発や制作の担当、文面の確認は法務や広報に頼ることになります。連携のたびに誰に聞けばよいのかを探していると、作業が止まります。
連携先ごとに窓口となる人を1人ずつ決め、依頼の方法と回答の期限をあらかじめ合意しておくと、待ち時間を減らせます。たとえば、実装の依頼は月初に一覧にして渡す、法務確認は公開の3営業日前までに出す、といったルールです。ルールは細かくなくて構いません。守れる範囲で決めて、守ることが重要です。
外部の力を借りる範囲の線引き

少人数のインハウスSEOは、すべてを自社だけで抱えない前提で設計したほうが続きます。ただし、何を外に出し、何を社内に残すかの線引きを間違えると、外注に頼りきりの状態に戻ってしまいます。
ハイブリッド型の考え方
前の章で触れた調査では、ハイブリッド型が最も多い運用体制とされています。ハイブリッドと言っても、中身は組織ごとに違います。記事制作だけを外に出す組織もあれば、技術監査だけを外部に依頼する組織もあります。大切なのは、外に出す作業の範囲を、自社の判断を支える材料の提供なのか、判断そのものの代行なのかで区別することです。
材料の提供であれば、外部の力を借りても、自社に判断力が残ります。判断の代行まで任せると、契約が終わった時点で自社に何も残らず、元の状態に戻ります。内製化を目指しているなら、判断を社内に残す線引きが前提になります。
内製に残すべき判断
最後まで社内に残すべきなのは、次のような判断です。
- どの事業やどの顧客に向けた記事を優先するかという方針
- 記事に載せる自社の一次情報や事例を、どこまで出すかという判断
- 成果をどの指標で測り、いつ見直すかという基準
これらは自社の事業を理解している人にしか決められません。外部に任せると、一般的には正しいが、自社に合わない施策が積み上がります。
外に出しやすい作業
逆に、外部に出しやすいのは、作業の範囲と成果物が明確に定義できるものです。技術的なサイト監査、構造化データの実装、記事の初稿の作成、被リンクの状況の調査などが該当します。作業が定義しやすいので、費用の妥当性も確認しやすくなります。
外部のSEO事業者に依頼する際の確認事項については、Google Search Centralにも公式の案内があります。過去の実績や成功事例を見せてもらうこと、期待される成果と達成までの期間を明確にしてもらうこと、変更内容の報告体制を確認すること、といった点が挙げられています。また、Google検索で1位を保証できる者はいない、という点も明記されています。依頼先を選ぶ段階から、この基準で確認できます。
https://developers.google.com/search/docs/fundamentals/do-i-need-seo
回らなくなった体制の立て直し

ここまでは体制をこれから作る前提で書いてきました。しかし、実際に相談が多いのは、すでに作った体制が回らなくなっているケースです。担当者が異動した、更新が止まった、成果が見えないまま半年が過ぎた。こうした状態から戻すには、新しく作り直すのとは違う手順が必要です。
止まった原因の切り分け
体制が止まった原因は、大きく3つに分けられます。1つ目は人の問題で、担当者の退職、異動、兼務の増加で時間が取れなくなったケースです。2つ目は仕組みの問題で、作業手順や判断基準が文書化されておらず、担当者以外が動けないケースです。3つ目は目的の問題で、何のためにSEOをやっているのかが共有されず、社内で優先順位が下がったケースです。
どれが原因なのかを見誤ると、対策が空回りします。人が足りない問題に手順書を作っても動きませんし、目的が共有されていない状態で人を増やしても、同じことが繰り返されます。切り分けの方法は簡単です。直近3か月の作業ログと、SEOに関する会議の記録を見て、止まった時期に何が起きていたかを確認します。
引き継ぎ資料の最低限
担当者が抜けた後の立て直しでは、前任者が残した資料が最初の手がかりになります。ただし、資料が残っていないことのほうが多いです。その場合は、次の4点だけを最初に確認します。
- 狙っているキーワードの一覧と、各キーワードに対応するページ
- 直近で公開、修正したページの履歴
- Search ConsoleとGoogleアナリティクスの管理者権限が誰にあるか
- 外部の事業者との契約内容と、納品物の保管場所
この4点が分かれば、何が残っていて何が失われたのかが見えます。完璧な引き継ぎ資料を作ろうとして時間を使うより、最低限の情報を押さえて動き出すほうが現実的です。
90日で戻す順番
立て直しは、いきなり全部をやり直そうとすると失敗します。一例として、90日を3つに分ける進め方を挙げます。最初の30日は現状の把握に使い、計測環境の復旧と、作業の棚卸しをします。次の30日は、成果に近いページを数本だけ選んで改善します。最後の30日で、運用のルールを文書にして、誰が見ても動ける状態にします。
Googleは、変更の効果が出るまでの期間について、数時間で反映される場合もあれば数か月かかる場合もあると説明しています。
https://developers.google.com/search/docs/fundamentals/seo-starter-guide
立て直しの効果を90日で判断しようとすると、早すぎる見切りになることがあります。90日で確認すべきなのは順位ではなく、運用が止まらずに回っているかどうかです。
よくある質問
SEO担当が1人しかいない場合、最低限何から始めればよいですか
最初に、5つの機能のうち自分が持てない機能を書き出してください。そのうえで、技術改修や専門的な監査など、頻度の低い作業から外部に頼る範囲を決めます。担当者本人が戦略と制作に集中できるようにするのが、1人体制で続けるための考え方です。
兼任の担当者に、SEOの時間はどれくらい確保すべきですか
業務量で変わるため、一律の数字は示せません。まず、現在の兼任業務を洗い出し、週に実際にSEOへ使える時間を計測してください。使える時間が少ないなら、更新頻度を下げて、既存記事の改善と計測に絞る運用に切り替えるほうが続きます。
内製と外注はどちらがよいですか
どちらが正解というものではありません。調査でもハイブリッド型が最多とされており、機能ごとに使い分ける組織が多いと報告されています。判断や方針は社内に残し、作業が定義しやすいものを外に出す、という線引きが一つの基準になります。
担当者が退職した後、体制はどう立て直せばよいですか
まず、前任者が残した管理権限、キーワード一覧、公開履歴、契約書類の4点を確認します。そのうえで、原因が人、仕組み、目的のどれにあるのかを切り分け、90日程度の期間で、現状把握、数本の改善、運用ルールの文書化という順に進めてください。
まとめ
少人数のインハウスSEOは、人数を決める前に、必要な機能を決めることから始まります。要点を整理します。
- SEOの運用は、戦略、コンテンツ制作、技術と実装、計測と分析、社内調整の5つの機能に分けて考える
- 体制図は、機能を縦に、担当者を横に並べた表にして、空欄と兼務の偏りを見える化する
- 人数よりも、SEOに実際に使える時間の合計で、現実的な運用量を見積もる
- 外部に出すのは作業、社内に残すのは方針と判断という線引きで、ハイブリッド型を設計する
- 回らなくなった体制は、原因を人、仕組み、目的に切り分け、90日で運用を戻すことを目標にする
体制は一度作って終わりではなく、作業量や人員の変化に合わせて見直し続けるものです。まずは今日、機能と担当者の表を1枚作るところから始めてください。
