- 解約で揉めやすい4つの論点と確認の順番
- 契約書で見るべき予告期間・最低期間・権利の条項
- Search Console・GA4・ドメインの権限を取り戻す方法
- 解約を決める判断基準と、解約後の引き継ぎ手順
SEO契約の解約で揉める論点

SEO会社との契約を終わらせたいと考えたとき、多くの担当者がまず気にするのは違約金です。ところが解約の相談や解説記事を読むと、実際に長引くのは金額の話よりも、サイトまわりの資産や管理権限を返してもらえるかどうかという点です。たとえば、リベシティのノウハウ図書館にある解約の解説記事も、揉めるのは違約金ではなくサイト資産の返却だという立場で書かれています(https://library.libecity.com/articles/01M3QKPCR688YZ9AJ0VXR26N21)。
この章では、解約で論点になりやすい事柄を先に整理します。順番を間違えると、解約通知を出した後に必要なデータへ触れなくなることがあります。
違約金より先に確認する順番
解約を決めたら、最初に確認するのは契約書の条項ではなく、自社が何を握っていて何を握っていないかです。Search Consoleの所有者は誰か、GA4の管理者は誰か、ドメインの登録者は誰か、サーバーの契約者は誰か。この4点を書き出します。
握っていないものが見つかった場合は、通知を出す前に名義や権限を自社へ寄せる段取りを立てます。通知後は相手の対応が事務的になりやすく、依頼してから返答までの時間も読めなくなるためです。
揉めやすい4つの論点
揉めやすい論点は大きく4つに分けられます。
- 解約の予告期間と通知方法(口頭でよいのか、書面が必要なのか)
- 最低契約期間と、その期間内に解約した場合の費用
- 納品済みの記事や制作物の権利が誰にあるか
- アカウント、ドメイン、サーバーの管理権限の返却
違約金は2つ目に含まれますが、全体の中では一つにすぎません。4つを並べて優先度をつけると、金額で譲ってでも守るべきものが見えてきます。
解約前に確認する契約書の条項

次に、手元の契約書や利用規約を読み、解約に関わる条項を拾います。サービス内容が「SEO対策一式」のように広く書かれている契約は、何を納品物とみなすのかが曖昧になりがちです。ここでは、読むべき箇所を3つに分けて見ていきます。
解約予告期間と通知方法
解約条項に「いつでも解約できる」とだけ書かれている場合、実際にいつから請求が止まるのかが不明確です。「解約希望日の30日前までに書面で通知」のように、期間と方法が決まっている契約のほうが、後から食い違いが起きにくくなります。
通知は、メールや書面など記録が残る方法で行い、受領の返信をもらっておきます。電話や面談での口頭のやり取りは、後で言った言わないになりやすいためです。
最低契約期間と違約金
最低契約期間が設けられている契約では、その期間内の解約に対して残期間分の請求や手数料が定められていることがあります。確認するのは次の3点です。
- 最低契約期間の起算日(契約日か、施策の開始日か)
- 期間内に解約した場合に請求される金額の計算方法
- 自動更新の有無と、更新を止める期限
自動更新の期限を過ぎていた場合は、次の更新期間分の請求対象になる可能性があります。請求の根拠となる条項を示してもらい、疑問があれば書面で質問します。契約の有効性や請求の妥当性を法的に判断する段階では、弁護士や消費生活センターに契約書を見せて相談してください。
成果物の権利と引き渡し
記事や画像、設計書などの権利が誰に帰属するかは、契約書の知的財産権の条項に書かれています。制作物の権利が業者側に残る契約では、解約後にその記事をサイトへ載せ続けてよいのかが問題になります。
確認するのは、権利の帰属先、解約後の利用許諾の有無、データの引き渡し形式(HTMLか、入稿用のテキストか、画像の元データか)の3点です。条項が見当たらない場合は、解約前に書面で取り決めておくほうが安全です。
取り戻すべき資産と管理権限

契約書の確認と並行して、サイト運営に必要な資産を自社の名義へ戻します。難しい作業ではありませんが、業者との連絡が必要になるものもあるため、解約通知より前に着手するのが基本です。
Search ConsoleとGA4の権限
Search Consoleには、所有者、フルユーザー、制限付きユーザーの権限があります。Googleのヘルプによると、他のユーザーに権限を付与できるのはプロパティの所有者だけで、所有者には確認済み所有者と委任された所有者の2種類があります(https://support.google.com/webmasters/answer/7687615)。
注意したいのは、業者が確認済み所有者として登録されていて、自社が委任された所有者にとどまっているケースです。同ヘルプには、確認済み所有者が全員いなくなると、残りのユーザーや委任された所有者は猶予期間の後にアクセスを失うと書かれています。解約前に、自社の確認トークンで確認済み所有者になっておくと安全です。
また、所有者を削除してもその人の確認トークンが残っていれば、再び所有権を確認できる点も、同ヘルプで注意されています。業者を外すときは、権限の削除に加えてトークンの削除まで行います。
GA4は、アカウントレベルの管理者でなければ、ユーザーへのロール付与ができません。管理者、編集者、マーケター、アナリスト、閲覧者のロールがあり、権限が重なる場合は最も広い権限が実効権限になります(https://support.google.com/analytics/answer/9305587)。業者に付けている権限が管理者でなくなったことを、解約日までに確かめておきます。
ドメインとサーバー
ドメインの登録者情報(Whois)、レジストラのアカウント、認証コード(AuthCode)の保管場所、サーバーの契約者名義、管理画面へのアクセス権を確認します。これらが制作会社や業者の名義のままだと、移管の手続きが相手の対応待ちになります。
移管のときの一般的な注意点は、@SOHOの解説記事にまとまっています。同記事では、DNSのTTLを移行の数日前に短くしておくこと、旧サーバーは最低でも1〜2週間様子を見てから解約することが勧められています。また、移管にかかる期間は1週間から1か月程度が目安とされていますが、これは筆者の見立てであり、レジストラや状況によって変わります(https://atsoho.com/blog/domain-server-access-client-retention)。
記事データと制作物
見落としやすいのが、CMS上の記事データ、入稿前の原稿、画像の元データ、キーワード設計や構成案のシートです。業者のクラウド上にだけ置かれている場合、アカウントが閉じられると取り出せなくなります。
解約前に、公開済みの記事の一覧(URL、タイトル、公開日、対策キーワード)を書き出してもらい、画像や原稿は自社の保管場所へコピーします。後から順位が落ちたときに、どの記事を誰がどう直したのかをたどる材料にもなります。
解約を決める判断基準と時期

資産の整理が進んだら、そもそも解約するべきかを冷静に見直します。順位が上がらないことだけを理由にすると、判断を誤ることがあります。
順位ではなく作業内容で見る
前述のリベシティの解説記事では、半年たってもサイトに変化がないことを判断基準の例に挙げ、順位ではなく作業量で見るべきだとしています。SEOは成果が出るまで半年から1年かかる施策だという考え方ですが、この期間に公的な根拠が示されているわけではありません。
自社で確かめられるのは、契約した作業が実際に行われたかどうかです。月次の報告書に、実施した施策、変更したページ、公開した記事が具体的に書かれているか。毎月ほぼ同じ文面になっていないか。この2点を見るだけでも、続ける価値があるかを判断する材料になります。
発注側の協力義務も確認する
SEO契約をめぐる裁判例では、発注者側にも協力が求められるとされた例があります。BUSINESS LAWYERSの解説では、東京地裁の平成29年4月27日の判決(平27(ワ)28193)で、事業者が準備作業を進めていたものの、広告主が必要な情報を提供しなかったとして、支払い済みの金額の返還請求が認められなかった事案が紹介されています(https://www.businesslawyers.jp/practices/1121)。
これは、業者に成果が出なかった責任を問う前に、自社が情報提供や確認依頼に応じていたかを振り返る必要があることを示しています。修正依頼への返答が遅れていなかったか、サイトの改修を止めていなかったかを、メールの履歴で確認しておくと冷静に整理できます。
解約する前に原因を切り分ける
成果が出ない原因は、業者だけにあるとは限りません。計測の設定ミス、サイト側の技術的な制約、社内での承認の遅れ、そもそもの対策キーワードの選び方など、複数の要因が重なっていることもあります。
乗り換えても同じ状態になるのを避けるには、解約前に現状を切り分けておくことが役立ちます。具体的には、インデックスされているページ数、検索流入のあるページと無いページ、直近で行われた施策の一覧を揃えます。この材料があると、次の依頼先にも、うまくいっていない状態を具体的に説明できます。
解約後の引き継ぎ手順

判断が固まったら、実際の手順に移ります。慌てずに進めるために、通知の前、通知から最終日まで、最終日以降の3つの時期に分けて考えます。
通知前の準備
通知前にやっておくことは、次のとおりです。
- 契約書の解約条項と請求ルールを読み、確認事項を書き出す
- Search ConsoleとGA4で、自社が所有者・管理者になっているかを確認する
- ドメインとサーバーの名義を確認し、必要なら移管の相談を始める
- 公開済み記事の一覧と、原稿や画像の保管場所を確認する
この4点が揃っていれば、通知後に相手の対応が遅くなっても、サイトの運営は止まりません。
通知から最終日まで
通知は、記録が残る方法で行います。書く内容は、解約の意思、希望する解約日、引き渡しを求める資産の一覧、引き渡しの期限です。感情的な表現は避け、事実と依頼だけを書きます。
最終日までに、権限の削除と付与、データの受け取り、最終月の報告書の受け取りを済ませます。業者の担当者が使っていたアカウントの権限を外した後は、サイトの更新やタグの動作に影響が出ていないかを確認します。
最終日以降の確認
解約後の1か月ほどは、サイトの状態を毎週確認します。見るのは、Search Consoleのインデックス状況とエラー、GA4のデータ取得の継続、サイトの表示速度、フォームなどの動作です。
業者が設置したタグやプラグインが残っている場合は、役割を調べてから整理します。計測に使っているタグを誤って消すと、データが欠けてしまうためです。
よくある質問
Q. 契約期間の途中でも解約できますか?
契約書の条項次第です。解約できる時期、予告期間、費用の計算方法は契約ごとに異なるため、まず条項を確認します。不明な点があれば書面で質問し、判断が難しい場合は弁護士や消費生活センターへ契約書を持って相談してください。
Q. 口頭で解約を伝えただけでも有効ですか?
有効かどうかは契約の内容によります。仮に有効でも、後で言った言わないになるのを避けるために、メールや書面で通知し、受領の返信を保存しておくのが現実的です。
Q. 業者がアカウントの権限を返してくれない場合は?
まず、契約書に権限の返却や引き渡しの条項があるかを確認し、書面で期限を示して依頼します。それでも対応がない場合は、Search Consoleは確認トークンによる所有権の確認など、自社側で行える手続きがないかを探します。それでも解決しないときは、弁護士に相談してください。
Q. 解約前に自社でやるべき一番大切なことは何ですか?
資産と権限の棚卸しです。Search Console、GA4、ドメイン、サーバー、記事データのそれぞれについて、名義と管理者を書き出すところから始めます。
まとめ
- SEO契約の解約で長引きやすいのは、違約金よりも資産と管理権限の返却
- 契約書では、予告期間と通知方法、最低契約期間、成果物の権利を確認する
- 解約通知より前に、Search Console、GA4、ドメイン、サーバーの名義を自社へ寄せる
- 判断は順位だけでなく、実施された作業内容と自社の協力状況を含めて行う
- 通知は記録が残る方法で行い、解約後1か月はサイトの状態を毎週確認する
解約は、相手との関係を終えるだけでなく、自社がサイトの主導権を取り戻す作業でもあります。順番を決めて一つずつ進めれば、揉めずに次の体制へ移れます。
