- 売上ではなく粗利で出すSEOのROI計算式
- 単月黒字と累積回収を分けた回収期間の見積もり方
- Search ConsoleとGA4で計算に必要な数字を集める方法
- 費用対効果が合わないときの切り分けと立て直しの順番
SEOに毎月まとまった費用を払っているのに、経営会議で「それで、いくら返ってきているのか」と聞かれて答えに詰まる。広告なら管理画面を開けば獲得単価が出ますが、SEOは同じようにはいきません。記事が何本増えた、順位が何位上がったという報告はできても、それが利益にどうつながったのかを一本の線で説明できる担当者は多くありません。
費用対効果が説明できない状態が続くと、SEOの予算は真っ先に削られます。本当は回収の手前まで来ていたのに、見え方が悪いせいで止めてしまうこともあれば、逆に回収の見込みが無いのに惰性で払い続けていることもあります。どちらも、計算の前提がそろっていないことが原因です。
この記事では、SEOの費用対効果を売上ではなく粗利で計算する方法と、回収までの期間を現実的に見積もる手順を、仮の数字を使って順番に説明します。そのうえで、計算してみたら合わなかったときに、どこが崩れているかを切り分けて立て直す手順まで扱います。
先に結論を書くと、SEOの費用対効果は「指名検索を除いた流入」から「粗利」までを計算し、単月ではなく累積で回収時期を判断すると、社内で説明できる数字になります。
SEOの費用対効果が見えにくくなる理由

SEOの費用対効果がわかりにくいのは、SEOという施策の性質そのものより、計算に入れる数字の範囲があいまいなまま議論していることが大きな原因です。よくあるずれは次の3つです。
費用と成果のあいだに時間差がある
広告は出稿した月に費用が発生し、その月に成果も出ます。SEOは、記事を公開した月に費用が発生し、成果は数か月後から少しずつ出てきます。月ごとに費用と成果を並べると、立ち上げ期は赤字にしか見えません。
Googleも、SEO業者に依頼する際に「どのような成果を、どのくらいの期間で見込むのか」を確認するよう勧めています(https://developers.google.com/search/docs/fundamentals/do-i-need-seo?hl=ja )。期間を決めずに費用対効果を問うと、どの時点で判断しても答えが出ないということです。
指名検索がSEOの成果に混ざっている
会社名やサービス名で検索して来る人は、SEOをしていなくても来ていた可能性が高い人です。ところが、Googleアナリティクスで「自然検索」の数字をそのまま見ると、この指名検索の流入も含まれます。
指名検索は広告や展示会、紹介など、SEO以外の活動の結果として増えることも多いため、ここをSEOの成果として数えると費用対効果は実態より良く見えます。反対に、ブランドの露出が減った時期にはSEOが悪化したように見えます。
費用に社内工数が入っていない
外注費だけを費用として計算しているケースもよくあります。実際には、原稿の確認、社内の専門家への取材、CMSへの入稿、修正のやりとりなど、社内の担当者の時間も使われています。
社内工数を入れないと、内製と外注を比べたときに内製が安く見え、外注先を変える判断や体制を見直す判断を誤ります。
粗利で計算するSEOのROI

費用対効果を表す指標としては、投資額に対してどれだけ利益が出たかを表すROIを使います。上位の解説記事でも計算式自体はほぼ共通ですが、分子に売上を入れるか粗利を入れるかで、結果は大きく変わります。
基本の計算式
SEOのROIは、次の式で計算します。
- ROI(%)=(SEO経由の粗利 − SEOにかけた費用)÷ SEOにかけた費用 × 100
- SEO経由の粗利=非指名の検索流入 × 問い合わせ率 × 成約率 × 1件あたりの粗利
- SEOにかけた費用=外注費 + ツール費 + 社内工数の人件費換算
分子を売上ではなく粗利にするのは、売上には商品やサービスを提供するための原価が含まれていて、そのままではSEOが生んだ利益にならないからです。
売上で計算すると過大に見える例
仮の数字で比べてみます。SEOの費用が月38万円(外注費30万円と社内工数8万円)、SEO経由の成約が月6件、1件あたりの売上が50万円、粗利が15万円の会社を考えます。
| 計算の分子 | 月のリターン | ROI |
|---|---|---|
| 売上で計算 | 300万円 | 約689% |
| 粗利で計算 | 90万円 | 約137% |
同じ施策でも、売上で計算するとROIは5倍近く大きく見えます。売上ベースの数字で予算を取ると、あとで経理や経営層が粗利で計算し直したときに説明が合わなくなり、SEOそのものの信用を落とします。社内で使うROIは、最初から粗利で出しておくのが安全です。
SEO経由の成果として数える範囲
もう一つ決めておくべきなのが、どの成果をSEOのものとして数えるかです。おすすめは、次の2段階に分けて集計することです。
- 直接成果:非指名の検索から来た人が、同じ訪問のうちに問い合わせや購入をした件数
- 間接成果:非指名の検索で最初に来た人が、後日ほかの経路から戻って問い合わせた件数
ROIの正式な数字には直接成果だけを使い、間接成果は参考値として横に添えます。間接成果まで足すと数字は良くなりますが、他の施策と成果を取り合うことになり、社内の合意が取りにくくなるためです。
回収期間を見積もる手順

ROIの式が決まったら、次はいつ回収できるかを見積もります。ここで大事なのは、単月で黒字になる時期と、それまでの赤字を取り戻す時期を分けて考えることです。
単月ROIと累積ROIを分ける
単月ROIは、その月の費用とその月の粗利だけを比べたものです。累積ROIは、施策を始めてからの費用の合計と粗利の合計を比べたものです。
SEOは立ち上げ期に赤字が積み上がるため、単月で黒字になっても、累積ではまだ赤字ということがよくあります。経営層が知りたいのは多くの場合「いつ元が取れるか」なので、報告では累積の数字を主に使い、単月の数字は勢いを示す補助として使います。
立ち上がりを置いたシミュレーション
先ほどの仮の会社で、粗利が段階的に立ち上がると仮定して計算します。費用は毎月38万円で一定とします。
| 期間 | 月あたり粗利 | 累積費用 | 累積粗利 | 累積の収支 |
|---|---|---|---|---|
| 1〜3か月目 | 0円 | 114万円 | 0円 | −114万円 |
| 4〜6か月目 | 15万円 | 228万円 | 45万円 | −183万円 |
| 7〜9か月目 | 45万円 | 342万円 | 180万円 | −162万円 |
| 10〜12か月目 | 75万円 | 456万円 | 405万円 | −51万円 |
| 13か月目 | 90万円 | 494万円 | 495万円 | +1万円 |
この例では、7か月目に単月の粗利が費用を上回りますが、累積で回収できるのは13か月目です。7か月目の時点で「黒字化しました」と報告すると、その後も累積の赤字が残っていることを説明できず、期待とのずれが生まれます。
立ち上がりの速さは、サイトの状態や競合の強さ、狙うキーワードによって大きく変わります。この表はあくまで考え方を示すための仮の数字なので、自社の数字に置き換えて使ってください。
維持費を入れておく
回収後にSEOの費用をゼロにできるわけではありません。記事の情報は時間とともに古くなり、競合が新しい記事を出せば順位も入れ替わります。料金や制度、ツールの仕様が変わるテーマなら、なおさら更新が必要です。
シミュレーションには、回収後も既存記事の見直しや更新にかかる費用を維持費として残しておきます。維持費を置かずに「回収したら費用は止められる」と説明すると、更新が止まって順位が落ちたときに、最初の説明と話が合わなくなります。
計算に使う数字を集める方法

式と期間の考え方が決まっても、元の数字が取れなければ計算できません。無料で使えるGoogleのツールで、ほとんどの数字は集められます。
Search Consoleで指名と非指名を分ける
Search Consoleの検索パフォーマンスレポートでは、検索クエリごとのクリック数や表示回数を確認できます。既定の表示は過去3か月分なので、比較するときは期間を指定し直します(https://support.google.com/webmasters/answer/7576553?hl=ja )。
指名検索を分ける方法は2つあります。1つは、Googleが提供しているブランドクエリのフィルタを使う方法です。会社名やその表記ゆれ、固有の商品名を含む検索を自動で分類してくれます(https://developers.google.com/search/blog/2025/11/search-console-branded-filter )。ただし、表示回数が少ないサイトや、ディレクトリ単位で登録したプロパティでは使えません。
もう1つは、クエリのフィルタで会社名や商品名を含む検索を除外する方法です。こちらは自分で除外する語を決める必要がありますが、どの語を指名として扱ったかが明確なので、社内で説明するときには扱いやすい面があります。
GA4で問い合わせや購入を流入元別に見る
GA4では、問い合わせ完了や資料請求、購入などのイベントをキーイベントとして設定すると、流入元ごとに件数を確認できます(https://support.google.com/analytics/answer/13128484?hl=ja )。自然検索からのキーイベントを、ランディングページ別に見ておくと、どの記事が成果に近いかも分かります。
Googleは、Search ConsoleとGoogleアナリティクスのデータを組み合わせて分析する方法も公開しています(https://developers.google.com/search/docs/monitor-debug/google-analytics-search-console )。検索クエリはSearch Console、訪問後の行動はGA4と役割を分け、ランディングページを共通の軸にして突き合わせるのが基本です。
成約率と粗利、社内工数を埋める
問い合わせから先の成約率と1件あたりの粗利は、GA4では分かりません。営業部門の管理表や顧客管理システムから、自然検索経由の問い合わせだけを抜き出して、成約率と平均の粗利を出します。件数が少ないうちは、全体の成約率と粗利で代用して構いませんが、代用していることは報告に明記します。
社内工数は、SEOに関わる人の月の作業時間を記録し、時間あたりの人件費を掛けて出します。正確な時間が取れない場合でも、担当者に「原稿確認に週何時間使っているか」を聞いて概算を置くだけで、外注費だけで計算したときとの差が見えるようになります。
費用対効果が合わないときの切り分けと立て直し

計算してみたら、1年たっても回収の見込みが立たない。そういうときに、施策をまるごと止めるか、惰性で続けるかの二択で考えるのは早計です。粗利の式を分解すると、どこが崩れているかが見えてきます。
4つの数字のどこが崩れているか
SEO経由の粗利は、非指名の流入、問い合わせ率、成約率、1件あたりの粗利の掛け算です。費用対効果が合わないときは、このどれかが想定より小さいか、費用が想定より大きいかのどちらかです。
| 崩れている数字 | よくある状態 | 最初に確認すること |
|---|---|---|
| 非指名の流入 | 記事は増えたが表示回数が伸びない | 狙ったキーワードで表示されているか |
| 問い合わせ率 | 流入はあるが問い合わせにつながらない | 流入の多い記事が情報収集の段階に偏っていないか |
| 成約率 | 問い合わせは来るが商談にならない | 問い合わせの中身が自社の顧客像と合っているか |
| 費用 | 記事本数に比例して費用だけ増える | 成果につながらない記事に費用が使われていないか |
全部を一度に直そうとせず、ずれが一番大きい数字から手をつけます。
流入が伸びない場合
非指名の流入が伸びないときは、新しい記事を増やす前に既存記事を見直します。Search Consoleで、表示回数はあるのに平均掲載順位が11位から20位あたりにとどまっている記事は、改善すれば1ページ目に入る可能性がある候補です。既存記事の直し方は https://qujiraseo.com/blog/kiji-rewrite-kotsu/ で詳しく説明しています。
似たテーマの記事が複数あり、どれも中途半端な順位にとどまっている場合は、評価が分散している可能性もあります。記事を統合するか、役割を分け直すかを検討します。
流入はあるのに成果につながらない場合
流入はあるのに問い合わせが増えない場合、流入の多い記事が「〜とは」のような情報収集の段階のキーワードに偏っていることがよくあります。こうした記事から、比較や費用、進め方といった検討段階の記事へ内部リンクで案内し、検討段階の記事から問い合わせへの導線を整えます。
新しく書く記事も、検討段階や課題解決のキーワードを優先します。検索する人が少なくても、自社のサービスに直結するキーワードのほうが、粗利への貢献は大きくなります。
費用の中身が成果に結びついていない場合
月の記事本数で契約していると、成果につながらない記事にも同じ単価で費用がかかります。直近半年に公開した記事のうち、非指名のクリックもキーイベントもほとんど無い記事がどれだけあるかを数えると、費用の使われ方が見えてきます。
外注している場合は、本数の契約を減らし、その分を既存記事の改善や導線の見直しに振り替えられないかを相談します。Googleも、SEO業者に依頼する際には、どのような成果をどのくらいの期間で見込むのかを確認するよう勧めており、Googleで1位になることを保証できる人はいないと明記しています(https://developers.google.com/search/docs/fundamentals/do-i-need-seo?hl=ja )。費用対効果の話し合いは、順位ではなく粗利の式のどこを動かすかで行うと、外注先とのやりとりも具体的になります。
外注先を変えるかどうかの判断基準は https://qujiraseo.com/blog/seo-kaisha-erabikata/ も参考にしてください。
よくある質問
SEOの費用対効果は何か月で判断すればよいですか
回収時期はサイトの状態や競合によって大きく変わるため、一律の月数で判断するのはおすすめしません。代わりに、3か月目は狙ったキーワードでの表示回数、6か月目は非指名のクリック数、それ以降は自然検索からのキーイベントというように、時期ごとに見る数字を決めておき、それが想定どおり動いているかで判断します。
売上に直接つながらないBtoBサイトではどう計算しますか
問い合わせから成約までの期間が長い場合は、問い合わせ1件あたりの期待粗利を置いて計算します。過去の問い合わせの成約率と、成約1件あたりの粗利を掛けた値です。成約データが少ないうちは幅を持たせた数字にして、データが増えるたびに見直します。
広告とSEOの費用対効果はどう比べればよいですか
同じ問い合わせ1件を得るための費用で比べるのが分かりやすい方法です。広告の獲得単価と、SEOの累積費用を累積の問い合わせ件数で割った値を並べます。SEOは立ち上げ期に割高に見えるため、比べる時点を明記したうえで、回収後の見込みも一緒に示します。
計算したら赤字でした。すぐにやめるべきですか
赤字の原因が、流入、問い合わせ率、成約率、費用のどこにあるかを先に確認します。流入は伸びているのに導線が無いだけなら、少ない追加費用で改善できることもあります。反対に、狙ったキーワードで1年近く表示すらされていない場合は、キーワードの選び方から見直す必要があります。
まとめ
- SEOのROIは売上ではなく粗利で計算し、費用には社内工数も含める
- 指名検索の流入はSEOの成果から除き、非指名の流入から計算を始める
- 単月で黒字になる時期と、累積で回収できる時期を分けて報告する
- 回収後も記事の更新にかかる維持費をシミュレーションに残しておく
- 費用対効果が合わないときは、流入、問い合わせ率、成約率、費用のどこが崩れているかを切り分けてから手を打つ
費用対効果は、計算の前提をそろえるだけで社内で議論できる数字になります。まずは直近の数字で、指名検索を除いた粗利ベースのROIを一度出してみてください。
