- 内製と外注を比べる前にそろえる前提と4つの軸
- 人件費と窓口工数を含めた総額での損益分岐点の出し方
- 内製・外注・併用が向く体制の条件
- 内製や外注が止まっているときの原因の切り分けと切り替え順序
判断の前提となる現状把握

SEOを内製にするか外注にするかを決める前に、そもそも何を比べているのかをそろえる必要があります。月額費用だけを並べると、外注は高く見え、内製は安く見えます。ところが内製には人件費と時間が、外注には窓口の工数と見えにくい制約がそれぞれ乗っています。
内製と外注の中身を分解する
SEOの仕事は、大きく4つに分かれます。
- 戦略と優先順位の設計(どのキーワードを、どの順で狙うか)
- コンテンツの企画と制作(記事の執筆、リライト、統合)
- 技術面の改善(クロール、インデックス、表示速度、内部リンク)
- 計測と改善(Search Consoleの確認、順位と流入の推移、打ち手の見直し)
内製と外注は、この4つのどこまでを自社で持つかの違いです。「全部内製」「全部外注」の二択ではなく、戦略だけ外部に頼む、制作だけ外部に頼む、といった切り分けが現実には多くなります。
リンクアンドパートナーズが企業のSEO担当者507人に行ったインターネット調査では、専門家の助言を受けながら社内で進める企業が51.5%、すべて自社内で完結する企業が41.6%、専門の代行サービスに全面的に委ねる企業が6.9%でした。出典は https://webtan.impress.co.jp/n/2024/02/28/46582 です。全面委託より、一部を外部の力で補う形のほうが多数派だという点は、判断の出発点になります。
比べる軸を先に決める
比較の軸が決まっていないと、どちらを選んでも後から不満が出ます。次の4軸を、選ぶ前に社内で言葉にしておくと迷いが減ります。
- 費用: 月額の支払いだけでなく、人件費、ツール費、制作費を含めた総額
- 速度: 施策を決めてから公開するまでに何日かかるか
- 再現性: 担当者が変わっても同じ水準で回せるか
- 学習: 判断の根拠とノウハウが社内に残るか
この4軸のうち、どれを最優先にするかで答えが変わります。速度を最優先にする組織は内製に、再現性と専門性を最優先にする組織は外部の力に傾きます。
費用で比べる損益分岐点の考え方

費用比較で最も多い失敗は、外注費の月額と、内製担当者の給与だけを並べて判断することです。実際には、どちらにも見落としやすい項目があります。
内製の総額に含める項目
内製の費用は、次の合計で考えます。
- 担当者の人件費のうち、SEOに充てる時間の割合ぶん
- 計測、調査、順位確認などのツール費
- 記事の執筆や画像制作を社内で持たない場合の外部制作費
- 学習のための時間と、研修や書籍などの費用
担当者がSEO専任でない場合、人件費は給与の全額ではなく、SEOに使う時間の割合で按分します。ただし、兼務の担当者は本業の繁忙で優先順位が下がりやすく、按分した工数が実際には確保できないことがあります。計画上の工数と、実際に確保できる工数を分けて見積もってください。
外注の総額に含める項目
外注側にも、月額の請求書に出ない費用があります。
- 外注先とのやり取りに使う社内の窓口工数(打ち合わせ、確認、修正依頼)
- 自社の商材や業界を理解してもらうまでの立ち上げ期間
- 記事の確認と承認にかかる社内の工数
- 契約を終えたときに、施策の記録や知見が手元に残らないリスク
月額の費用帯について、前述の調査では代行サービスの費用は月額30万円以上50万円未満という回答が最多でした。ただしこれは調査に回答した企業の分布であり、自社に当てはまる相場を示すものではありません。見積もりは必ず複数の窓口から取り、含まれる作業範囲をそろえて比べてください。費用の内訳の見方は、当サイトの https://qujiraseo.com/blog/seo-gaichu-hiyo/ でも整理しています。
仮置きの数字で分岐点を出す
分岐点は、自社の数字を式に入れて出します。次は考え方を示すための仮置きの例で、実在の相場や実績ではありません。
| 項目 | 内製(仮置き) | 外注(仮置き) |
|---|---|---|
| 担当者の人件費(按分後) | 月30万円 | 月5万円(窓口工数) |
| ツール費 | 月3万円 | 0円(外注先が持つ想定) |
| 制作費 | 月10万円 | 月40万円(作業範囲に含む) |
| 合計 | 月43万円 | 月45万円 |
この例では、ほぼ同額になります。つまり、費用だけでは決まりません。差がつくのは、同じ金額で何本の施策が回るか、担当者が休んだときに止まらないか、という点です。ご自身の数字で表を作り直してみてください。
費用の比較は月額ではなく、人件費と窓口工数を含めた総額で行うのが、判断を誤らないための基本です。
規模と体制で決める判断基準

総額で並べたあとは、体制に当てはめます。同じ費用でも、担当者が何人いるか、経営層がSEOをどれだけ重視しているかで向き不向きが変わります。
内製が向く条件
次の条件がそろうほど、内製の優位が出やすくなります。
- SEOを主担当とする人が1人以上確保でき、その人が評価される仕組みがある
- 商材や顧客の理解が深く、記事の中身を社内の知見で作れる
- 施策から公開までの意思決定が短く、承認に何日もかからない
- 扱うページ数が多く、継続的に更新と改善を回す必要がある
記事の更新が日常業務に組み込めている組織は、内製でノウハウが積み上がります。逆に、担当者の確保や評価の仕組みが曖昧なまま始めると、数か月で止まりやすくなります。体制の組み方は https://qujiraseo.com/blog/seo-inhouse-taisei/ に詳しく書いています。
外注が向く条件
一方で、外部に任せたほうが早い場面もあります。
- 社内にSEOの経験者がおらず、まず現状の診断と優先順位づけが必要
- サイトの移転やリニューアルなど、短期に専門的な判断が要る局面がある
- 技術面の改善が中心で、社内に開発とSEOの両方をつなげる人がいない
- 担当者が退職した直後で、体制を立て直す時間が取れない
Googleの検索ドキュメントでも、SEOの専門家を雇うタイミングとして、サイトのリニューアルを検討しているときが適しているとされています。早い段階で関わってもらうほど効果的だという趣旨です。出典は https://developers.google.com/search/docs/fundamentals/do-i-need-seo です。
併用(ハイブリッド)の分け方
調査で最も多かったのが併用型でした。分け方は、判断を外に置くか、実行を外に置くかで考えると整理できます。
- 戦略設計と月次レビューだけを外部に頼み、制作と公開は社内で行う
- 技術面の改善だけを外部に頼み、コンテンツは社内で作る
- 立ち上げの数か月だけ外部に伴走してもらい、手順を社内に移す
併用で失敗しやすいのは、境界があいまいなまま始めて、どちらも責任を持たなくなることです。誰が何を決め、何を実行するかを一枚の表に書いてから始めてください。
立て直しの局面での進め方

多くの比較記事は、これから体制を作る前提で書かれています。しかし実際の相談は、すでにどちらかで回していて、うまくいっていないというケースが少なくありません。この場合は、新規に選ぶ話とは手順が変わります。
内製が止まっている場合
内製で更新が止まる原因は、多くの場合、担当者の能力ではなく仕組みにあります。
- 兼務で優先順位が下がり、SEOの時間が確保できていない
- 成果の見方が決まっておらず、続ける理由が社内に伝わっていない
- 担当者が1人で、判断の相談相手がいない
こうした状態で外注に切り替えると、費用は増えるのに、社内の合意や承認のボトルネックは残ります。先に、止まっている原因が時間なのか、判断なのか、スキルなのかを切り分けてください。時間なら制作の一部を外に出し、判断なら月次の相談役を置く、というように、必要な部分だけを補うのが現実的です。
外注の成果が見えない場合
外注していて成果が見えないときは、契約を切る前に確認することがあります。
- 契約の作業範囲に、自社が期待している作業が入っているか
- 報告の指標が、順位だけでなく流入や問い合わせとつながっているか
- 施策の記録が自社に共有され、いつでも見返せる状態か
Googleは、SEOの専門家に依頼する際、これまでの成功例を尋ねること、Googleの方針に沿っているかを確認すること、変更の内容をどう文書化して共有するかを聞くことを勧めています。また、検索順位の1位を保証できる人はいないとも明記しています。出典は先ほどと同じ https://developers.google.com/search/docs/fundamentals/do-i-need-seo です。乗り換えを考えるタイミングの見分け方は https://qujiraseo.com/blog/seo-norikae-timing/ にまとめました。
切り替えの順序
体制を切り替えるときは、次の順で進めると失敗が少なくなります。
- 現状の施策、契約内容、サイトの状態を一覧にする
- 止まっている原因を、時間、判断、スキルのどれかに分ける
- 補うべき部分だけを外部に出すか、内製に戻すかを決める
- 最初の3か月で見る指標を決め、その範囲で再評価する
切り替えの直後は、成果が出る前に評価の時期が来ます。そのため、評価の指標は順位ではなく、公開した施策の本数や、改善した課題の数といった、行動の量で最初に見てください。
内製と外注を見直すタイミング

一度決めた体制は、固定ではありません。事業の規模やサイトの状態が変われば、最適な形も変わります。
見直しの合図
次のような変化があったら、体制の見直しを検討する時期です。
- 担当者が異動や退職をした、または兼務が増えた
- サイトの規模が大きく変わった、またはリニューアルを控えている
- 3か月続けても、公開した施策の本数が計画に届いていない
- 外注の報告が、自社の意思決定に使えていない
とくに担当者の入れ替わりは、内製の最大のリスクです。事前に引き継ぎ資料を作っておく手順は https://qujiraseo.com/blog/seo-tantosha-taishoku-hikitsugi/ で解説しています。
見直しで確認する数字
見直しのときは、感覚ではなく次の数字を確認します。
- 月ごとの公開本数と、計画との差
- Search Consoleで見た表示回数とクリック数の推移
- 外注費、人件費、ツール費を合算した総額
- 施策の実行から公開までにかかった日数
数字がそろっていれば、「外注に切り替える」「内製に戻す」「併用に変える」のどれを選ぶ場合も、理由を社内に説明できます。
よくある質問
小さな会社は外注のほうが得ですか
一概には言えません。社内にSEOの経験者がいない場合、外部の診断で優先順位を決めてもらうほうが、遠回りを避けられることがあります。一方、Googleは小規模な事業者でも、公式のSEOスターターガイドを使って自分でできる範囲が大きいとしています。まず自社でできる範囲を確認し、足りない部分だけを外に出す順序をおすすめします。
内製に切り替えたら外注費はゼロになりますか
ゼロにはなりません。人件費、ツール費、学習の時間が代わりに発生します。最初の数か月は、外部の助言を一部残すほうが、手順が早く定着します。
外注先に任せきりでも大丈夫ですか
おすすめしません。商材や顧客の理解は社内にしかなく、記事の確認や承認も社内の判断です。月に一度でも、施策の記録と判断の理由を共有してもらう場を設けてください。
途中で体制を変えると順位に影響しますか
体制を変えること自体が順位を下げるわけではありません。影響するのは、切り替え期間中に更新が止まったり、記事の統合や削除などの変更が記録されないまま進んだりすることです。変更の履歴を残しながら進めてください。
まとめ
- 比較の対象は月額ではなく、人件費、ツール費、窓口工数を含めた総額
- 費用がほぼ同じなら、速度、再現性、学習のどれを優先するかで決める
- 担当者の確保と評価の仕組みがあれば内製、診断や技術面の判断が必要なら外部の力を使う
- すでに止まっている場合は、原因を時間、判断、スキルに分けて、必要な部分だけを補う
- 体制は固定ではなく、担当者の変化やサイトの規模に合わせて見直す
内製か外注かは、どちらが正しいかではなく、今の体制で何が回っていないかから決まります。まずは現状を一覧にして、止まっている部分を特定するところから始めてください。
